願い叶って 

令和元年7月1日

 




       中野浄蓮





 6月5日、わたしは俎岩山蓮着寺、奥之院の階段に腰を掛けて、眼下に広がる伊豆の海を眺めています。
 静かな日で波も立っていません。
 つい先ほど拝んだ俎岩には波が寄せて、白い飛沫が高く上っていました。
 それを見ているうちに、一度に色々の思いが押寄せて来ました。


 半世紀前の蓮着寺は寂しく、奥之院へ登る表示も見当りませんでした。
その時から私は俎岩を拝みたいと願っていたのです。


 其の後、20年程前に参詣に来た時は、海岸寄りに駐車場が出来ていましたが人影は少なく、寺の境内に入ると一寸した休憩所があり、寺の由緒と思われる放送が流れ、小山の入口には奥之院と書かれた小さな看板が立っていました。
 奥之院に登れば俎岩が拝めると人伝てに聞いていたので少し登って見たのですが、道も狭く悪く木陰で不安になり、下りてしまいました。
 
 願い叶っての今回は驚きの連続です。寺の近くには大きな駐車場が出来て沢山の車がありました。
 伊東市では、此の地域を日本の観光地として発展させる事を目的とし、海辺の道を整備したそうで、途中、日蓮岬と名づけられた道を通り、蓮着寺の境内を抜けて、俎岩を見て奥之院に至ります。その先は他の市街地に通じる道を造成したとの事で、其の道を歩く何名かの人、又グループに会いました。
 奥之院への道は舗装され、人が行き交っても通れる道幅になっていました。
 登り坂を、杖をつき息を切らし、もう休もうとした時、俎岩の表示が見えました。もう直ぐです。7m程登ると海側に突き出た一寸平な場所があって、眼下遥かに海が広がり、近くの海中には幾つかの岩礁が姿を現わしていました。俎岩はその中の大きめな岩です。
 近くの陸地は断崖絶壁、崖の近くは岩が連なり、とても崖に上る事は出来ない事が分りました。
 俎岩には時折り波が押寄せて岩を隠してしまいます。
 合掌し、日蓮大聖人の岩に立たれた姿を偲び、少し降って蓮着寺の奥之院に参詣できました。


 其の後、踵を返して蓮着寺の受付所に行き、御宝前に心ばかりをお供へさせていただきました。
 事務所の若い女の方に
「私は半世紀も前から何度か此処へ伺っています。本当に立派になりましたね。お題目様の力って凄いですね」
と声をかけてしまいました。すると彼女は
「本当にそう思います。有難い事です。」
と顔を上げて言葉を返してくれました。

 半世紀の間願い続けた俎岩を拝む事が出来ました。私は改めて「お題目」の功徳力を思い至り、息ある限り「お題目」をお唱えして足りぬながら法華経流布の志を持ち続けなければならぬと思いました。


(申し遅れましたが)
 去る6月4日5日、当教会では「寺院団体参拝」において、「伊豆伊東の日蓮大聖人のご霊跡を参拝」し、他の霊跡寺院も参拝致しました。

 蓮着寺は「法華宗陣門流」の寺院で今から200年近い前に小田原北条氏の待臣、今村若狭守が小堂を建てたのにはじまるということです。
(伊東観光協会オフィシャルサイトより)


2019年07月01日